ナイト オブ デッド ポエット

村田活彦さんから「話したいことがある」と言われて新宿の居酒屋で飲んだのは、今から2ヶ月くらい前のことだ。


2010年に猫道節で共演してから5年余り、特に最近は「どんと、こい!」のロングインタビューを始めとして、お会いする機会も頻繁にはなっていたが、膝を突き合わせてじっくりと話す機会は、これが初めてだった。
そこで色々な話をした。彼が代表を務めるポエトリースラム・ジャパンのこと。あるいは、ポエトリー・リーディングについての考え方。率直に、考えていることや思っていることを申し上げた。お互いに忌憚の無い意見を戦わせた。キャリアの面で先輩にあたる村田さんは、自分の話を真摯に聞いて下さった。
時は過ぎ、話が一段落した所で私は2つのことを村田さんに伝えた。ひとつは、私がポエトリースラム・ジャパンの名古屋予選にエントリーすること。そしてもうひとつは、その翌日に開催される「SPIRIT」に、スペシャルゲストとして出演いただきたいということ。


2016年2月1日、RUBY ROOMのステージに立った村田活彦は、「この忙しいタイミングで、ここの主催者は「絶対ここで出演した方が良いですよ!」ってね。悪い人たちですよ!」という内容のMCをしていた。正確に言えば、オファーしたのは私で大島健夫には全く伝えてなかったので、悪人は私ということになる。そして、私が悪人であるという指摘は正しい。村田活彦がこのオファーを断ることはないはずだ、という確信を最初から持っていたのだから。




バックトラックは一切なし。言葉によるパフォーマンスのみの30分。渋谷サイファーの教室に通っている成果を形にしたラップ、朗読の現場をホラーテイストにアレンジした落語調のストーリーテリング、そしてポエトリー・リーディング。どのパフォーマンスにも、裏打ちされたカルチャーへの愛情と「フレッシュ」さが溢れていた。それが村田活彦の真骨頂と言っても過言ではないと思う。この朗読の先輩は、いつ会っても新鮮だ。いつも先を見ている。カルチャーへの、音と言葉への探求を止めることがない。それでいて、ひとつひとつのパフォーマンスが、明確な歴史によって裏付けされていることが伝わってくる。彼が世界レベルのポエトリースラムで日本大会を担う役割に就いたのは偶然の連鎖による結果かもしれない。しかし、歴史は時間を経て顧みた時に初めて必然を帯びてくる物だ。決して人口が多くない詩の朗読の世界で、道を切り開く鋭いアンテナを常に張りめぐらせた存在であったことは間違いない。この日の彼のパフォーマンスには、確かに彼が切り開いてきた「歴史」が顔を覗かせていた。それは村田活彦の歴史でもあり、彼が携わってきたカルチャーや、関わってきた人たちの顔でもあったように、自分には思えた。


オープンマイクにご参加いただいたのは、登場順に


筒渕剛史さん
タオさん
渡ひろこさん
死紺亭柳竹さん
コリンZ’さん
llasushiさん
ジュテーム北村さん
かとうゆかさん
遠藤ヒツジさん
さやさん
芦田みのりさん
もがくひとさん


以上の皆さんでした。初登場の方は3組。加えて初のコンビ参加で、漫才を披露いただいた方もいらっしゃいました。
オープ二ングは大島健夫が「市営住宅のバレンタイン」を、最後は私が「future」と「goes on」を朗読させていただきました。


オープンマイク「SPIRIT」次回は3月7日(月)です。スペシャルゲストには中原中也賞受賞詩人、大崎清夏さんをお迎えします。どうぞお楽しみに!