MY DJ SAVED MY LIFE


DJの話をしましょう


スポークンワーズの世界へ足を踏み入れてから
1年が過ぎました。
オープンマイクの現場に行くと
DJをやっている、ということで興味関心を
持っていただくことが多いですし
また、クラブ界隈での友人知人は
一体何故、そんなことを始めたのかと
質問を受ける機会は、未だに多くあります。


人前で音楽をかける、という行為を始めてから
14年近くになります。
といっても、空白の期間もありますし
そもそも最近は回数自体も減っているので
ただ時間だけが過ぎている、というのが本当のとこです。
最初はクラブでできた友達同士が集まって
好きな音楽をかけようと、というノリでした。
CDJで好きなドラムンベースをかける感じで
そこで終わるはずでしたが、
次に興味関心を持った、MOODYMANや初期のGUIDANCEレーベル等の
ディープハウスが、アナログでしか入手できなかったので
次第にそういった12インチを揃えるようになり
揃えたら、やっぱりDJしたくなるのが人情ってもので
友達に助けてもらって自分でパーティー催して、
そこから、色々な人たちとの繋がりがあって
で、今ここです。


それでも、
スキルはともあれ
自分で納得できるDJができるようになったのは
ここ数年の話です。
今プレイしている中心はテックハウス
その中でもミニマル色が強いトラック
メロディも旋律もない、時折空間が歪むような
音響が入っては、消える、そんな感じ。
手を挙げて盛り上がったり、ヴォーカルハウスだったり
所謂アンセム的なものは、一切使用しなくなりました。
自分で試聴して、感覚がマッチしたものを買って
それをプレイする。有名無名は関係なく。


変な話ですが
人をロックしたい!とか盛り上げたい!という気持ちは
DJに関しては今はそれほど持っていません。
(スポークンワーズの時は、そう思っているかもしれない)
別に有名なDJでもありませんし、気まぐれな性格なのに
何故これだけDJを続けているのかが
自分でもよく分かっていませんし
何度か、辞めるのかな?と思った瞬間もありましたが
人の縁があって継続していて、
そして、年月を重ねることにDJという行為が
単純に音楽が好き、という衝動を越えた所にあって
それを欲しているのが何よりも自分自身なんだな、と
思い始めてから、考え方がはっきりしました。


洋邦問わず、自分がリスペクトするDJを3人挙げると
DJ KRUSH
REE.K
NICK THE RECORD
になります。
ご存知の方は分かると思いますが
ヒップホップ、トランス、ディープハウスと
音楽性は全然違う人達です。
でも、この3人が出されている音、ビートには
同じ感覚が流れているように思っています。
当時、仲間うちでは「四次元キック」という
言い方をしていたのですが
ジャンル云々を言う前に、音のひとつひとつが
直接頭の中に飛び込んでくるような感覚。
身体だけではなく、脳をジャックされてる。
それを体験すると、もう理屈や論法はかなわない
強烈な感覚。
自分にできるかはどうか、は置いといて
自然と、それを目指すようになりました。


DJをしている時、とスポークンワーズのLIVEでは
自分の中に違いはあるのか?
というのは実際良く考えます。
多分、猫道さんがカバーされた
「ライオネス コーヒー キャンディー」で
uraocbを知った方には、
自分のDJは全く別人に聴こえると思いますし
ディープハウスや、デトロイトテクノをプレイしていた
5年前の自分のDJを知っている方も
おそらく、全く変わったと思われるかもしれません。
それでも、自分ではあまり「変わった」という感覚は希薄で
自分の核になる部分が剥き出しても平気になったという
地点なのだと思います。
DJに関しては、多分今ここが最終地点で
後も先も、もうない。何たって四次元だし。


自分のスポークンワーズが、その地点まで行くのか
そもそも自分は、それを望んでこの世界へやって来たのか
という疑問は、実の所自分の中では明確には解決していません。
おそらくは経験の中から導き出されることでしょうし
その時までは、あるいは力が残っている限りは
DJもリーディングも続けていくのかな?と思っています。
昔も今も、何でこうなったのかは分かってない。
想像もつかない彫刻が掘られる、という喜びへと
歩みだしていく。
いつまでも。



(1999年@ホームワーク 撮影ACTY)