ゆれつづける

片山さゆ里、というシンガソングライターを初めて観たのは今年の5月のことだった。


下北沢のミュージックバーで催されたその日のイベントは、ミュージシャンがポエトリーリーディングを行うという趣旨で、ステージに現れた彼女は、自分の日記を10年遡って読んでいった。歌を間に挟みながら、涙を浮かべながら矢継ぎ早に展開されていく「自分史」は、赤裸々で、かつ圧倒的な世界をライブ会場に作り出した。


この人は本気だ、と思った。勿論、ステージに上がる人は皆本気であることは間違いない。彼女の本気とは、言葉のひとつひとつのクオリティだった。まだステージに上がることを意識していない、幼少時代の日記でさえ、彼女の言葉は粒立っていて、まるで世に出ることを予期していたようなテキストだった。そこには、言葉を粒立たせなければならないリアリティがあった。ステージに上がる前から、言葉を尖らせてきた人、そしてステージで歌うことによって、自分を支えている人。そういった必然性を彼女の言葉から強く感じた。それは、世の中で言われる詩人の定義よりも、さらにさらに詩的であると、私はそう思えた。「SPIRIT」というオープンマイクに彼女をお迎えするというアイデアは、今にしてみれば私の中ではこの時に決まっていたのかもしれない。



弾き語りというフォーマットで括られてはいるが、速射砲のように繰り出される片山さゆ里の歌と言葉のスピード感は、そういったジャンルの枠を軽く飛び越えていく。それはラップのようでもあるし、絶頂期のボブ・ディランを彷彿とさせる。同時にそのスピード感は今を生き急いている彼女そのものを体現している。初めてポエトリーリーディングの現場に立つシンガソングライターと、初めてそのパフォーマンスを観る詩人達。その緊張感を伴う静けさは、今までのSPIRITとはまた一味違った空間にRUBY ROOMを染め上げていた。それは、間違いなく「詩」の空間であったと思う。


オープンマイクにご参加いただいたのは、登場順に


midoさん
麻生有里さん
浦世耀一朗さん
ユウサクさん
ソニックナースさん
むれくじらさん
タオさん
死紺亭柳竹さん
rabbit fighterさん
ジュテーム北村さん
M1NAZUK1さん
もがくひとさん


以上の皆さんでした。毎回お越しいただく皆様に加えて、
初登場の方、久々にお越しいただいた方、
年齢層も幅広く、様々な方にご登場いただきました。
オープニングアクト大島健夫が朗読し
最後は私が新作を読ませていただきました。


オープンマイクSPIRIT、次回は11月2日(月)です。ゲストにはカニエ・ナハさんをお迎えします。どうぞお楽しみに!