新しい出会い

自分を含めてのことだが、ポエトリーリーディングのオープンマイクへ出かけると、時折この人達はどのような過程を経て詩の朗読という方法に辿り着いたのだろう?と考えることがある。
勿論、人の数だけその過程はあるだろう。文学であったり、音楽であったり、演劇であったり、朗読であったり。様々な変遷を経て朗読に辿り着いた人達だ。一回だけオープンマイクに参加するために足を運んだ方もいるかもしれない。短い休憩や終演後に、参加された方同士が十分に会話を交わすされる時間も多く取ることはできない。ステージ上から類推される人となりから何某かを受け取ることが、コミュニケーションの中心にならざるをえない。それでも、ひとつはっきりしていることは、ステージの上で展開されているオープンマイクは、その人にとって今もっとも興味関心を持っている対象そのものであるということだ。その対象は、翌日には変化してしまうような物かもしれないが、私たちは確かにその瞬間を目に焼き付けている。


レイトというラッパーを初めて生で観たのは「開口一番」という当時渋谷PLUGで催されていたオープンマイクだった。既にCDを何枚もリリースしている、自分も存在を知っているラッパーが、朗読のオープンマイクに参加していることに驚いた。それから後、私は色々なラッパーと知り合い、クラブのパーティーに出演する機会を持つようになる。その現場で、何度かレイトのライヴも観るようになった。彼のライヴは、それまで観てきたラッパーとは異なる感覚を放っていて、ずっと印象に残っていた。パーティーの場で彼は「孤独」を表現しているように感じていた。その魅力は、もしかすると彼が姿を現したポエトリーリーディングの現場にも相通ずる物があるのかもしれない。それが今回彼に「SPIRIT」でのスペシャルゲストとしてのオファーを考えたきっかけだった。




時に鋭利な刃物のようでもあり、時に豊かな風景を現出させるような音と言葉の世界。それは、レイトという表現者のインナービジョンに直結している。ヒップホップの世界で、ラッパーというスタイルで、このスタンスを貫くことがどれだけタフであるのか。その意味をまざまざと体感するような30分間のステージだった。自分が目指す物と、自分が好きな物、そして自分にしかできない物、その狭間で揺れ続ける。それでも、ステージに立つことを選択した人間が放つ独特のオーラに満ちた表現。そこにはラップとポエトリーの境は存在せず、私たちは無心で彼のパフォーマンスに見入っていた。


オープンマイクには、14名の方に登場いただきました。
ご登場頂いたのは、登場順に、


長田爽香さん
ポテトチップスさん
丸山永司さん
遠藤ヒツジさん
モリマサ公さん
オチヤマさん
死紺亭柳竹さん
ジュテーム北村さん
津田一矢さん
渋澤怜さん
DJ春井さん
散文写真家 牧野晋三さん
上條美由紀さん
チェルシーさん


以上の皆さんでした。14人中、初登場の方は6人!キャリアやスタンス、国籍等、様々な枠を超えた声と言葉の共演でした。毎月開催しているオープンマイクイベントでも、その回毎に新しいドラマやドキュメントが生まれていきます。この日の出会いが、皆様にとって素晴らしい契機となることを願って止みません。
オープニングは大島健夫が「踊れ」を、最後はURAOCBが「ライオネス・コーヒー・キャンディ」を朗読しました。


ポエトリーリーディングオープンマイク「SPIRIT」、次回は7月4日です。スペシャルゲストには、歌人の野口あや子さんをお迎えします。今後とも「SPIRIT」を宜しくお願いいたします!